黄金の夜明け団と現代の魔術

黄金の夜明け団の栄光と衰退。ゴールデンドーンの奇跡が誕生させた現代の魔術とは

黄金の夜明け団の栄光と衰退

イギリスで創設された魔術結社 黄金の夜明け団

19世紀末のイギリスでその奇跡は始まった。黄金の夜明け団、ゴールデンドーンの誕生。
1833年、ウィリアム・ウィン・ウェストコット、マグレガー・マザーズ、ウィリアム・ロバート・ウッドマンの3名により黄金の夜明け団は隠秘学結社として創設される。隠秘学とはオカルト主義、オカルティズムです。占星術、錬金術、魔術などの実践よりオカルト学、隠秘学の総称。一般的には、西洋神秘思想、魔術結社、秘密結社などの教義、世界観、知識体系の実践と同じ意味となります。オカルティズムは最近の言葉の様に思われますが古代より、その実践は行われていました。ルネサンス期になってオカルト哲学・オカルト諸学という言葉が使われるようになりました。
オカルティズムの言語であるオカルトはラテン語で「隠す」「隠されてきたもの」を意味し「超自然的な存在や法則」を得ようとする技術や精神的営みから得られた結果の知識体系となります。

黄金の夜明け団の教義はカバラを中心に当時、ヨーロッパでブームであった神智学の東洋哲学や薔薇十字団伝説、錬金術、エジプト神話、タロット、占い、グリモワールなどを習合させ魔術奥義を体系化しました。黄金の夜明け団の組織は昇格試験を経て上位の位階に進むというシステムを採用する「魔術学校」の様相を呈していました。後のヨーロッパで設立される密教団体は黄金の夜明け団の組織システムを真似ることにまります。それまでの秘密結社はフリーメーソンの階級制をアレンジしていましたが当時のメーソンは女性の入団を認めてはいませんでした。魔術結社は女性の入団を認めていました。

黄金の夜明け団の全盛期には400名を超えるメンバーがいたとされています。その3分の1が女性であったことことから女性が活躍できる結社であったことが伺えます。女性団員の殆どが神智学協会からの集まっています。当時、ヨーロッパでは女性の地位は低く、女性に参政権は無く投票権は1928年まで認められていませんでした。黄金の夜明け団の男女同等の思想は女性の地位が結社のなかで上位になると男性に権限を振るうことすらできました。それは、新生社会への前兆、現代社会の先駆けとも言われています。

元々の黄金の夜明け団は中流階級の交流会的な要素が強かっのですが、創設者の一人、マグレガー・メイザースがパリ在中時に「秘密の首領」との接触することで結社内での権威が高まることになります。メイザースは階級制度の大改革を行います。その結果、黄金の夜明け団は社交クラブから一転、本格的な実践派の魔術結社となりました。「秘密の首領」とは、魔術結社の許可を与える存在とされています。物質社会には存在せず肉体的感覚では感知ができないとも言われ人類より進化した超人であり人類を導いている存在とも言われています。「秘密の首領」の存在は黄金の夜明け団が始まりですが起源は「薔薇十字団伝説」の影響とされています。創設者の一人、ウェスコットの突然の脱退によりメイザースに権力が集中すると彼は独裁的になっていきます。メイザースの独裁は他の団員の反感をかうことになり黄金の夜明け団の衰退が始まることにまりました。

独裁者メイザースの追放後、団内の抗争は激化すると「黄金の夜明け」と「A∴O∴」の2派に分裂のち、「黄金の夜明」は、「曙の星」と「聖黄金の夜明け」に再分裂となり、黄金の夜明け団は3派に分裂することになります。事実上、黄金の夜明け団は消滅することになります。

黄金の夜明け団が近代魔術の祖と言われている所以は、その抗争と分裂にあると言っても過言では御座いません。黄金の夜明け団の分裂は、隠された神秘と魔術を世に知らしめることになったからです。黄金の夜明け団が残した思想は普遍の人類の創造と未来の光。そして、近代化された魔術の技法の価値は計り知れないものなのです。

黄金の夜明け団